AI顧問 / GYOMU EDITORIAL
特集号 vol.01
2026.07 / 所要 約4分
特集|中小企業とAI FEATURE

「まず、何から始めれば
いいですか」
——その一言に、いくら払わされましたか。

総務省・令和7年版情報通信白書によれば、中小企業がAIを活用できない最大の理由は「何から始めればよいかわからない」だという。この曖昧な一言に、月100万のコンサル、使わないSaaSの年間契約、社員研修という名の座学が売られていく。答えを買ったはずが、答えは来なかった——彼らに足りなかったのは、ツールではなく、隣で判断してくれる誰かだった。

IN THIS ISSUE
不安を売る商売と、その値段page 01
顧問弁護士のように、AIにも顧問がいるpage 02
実際に、何を相談できるのかpage 03
市場のいま/編集室からのご案内page 04

TAKE 01 / 取材ノート 不安を売る商売と、その値段

東京・港区で従業員18名の印刷会社を営むA社長のもとに、この二年で三社のAIベンダーが訪れた。示された見積は、初期300万・月30万。別の一社は年契約1,200万。三社目は「まずは戦略策定から」で200万。いずれも契約は結ばなかった。理由は「怖かったから」ではない。本当に必要かどうか、判断できる相手が、身近にひとりもいなかったからだ。

同じ相談を、無料の公的窓口(よろず支援拠点や商工会議所)に持ち込めば、丁寧に一般論を教えてくれる。ChatGPTを開けば、それらしい答えを返してくれる。だが「うちに来たこの見積、これ、払う価値ありますか」——この一言に、責任を持って答える相手は、いない。

払わない理由がわからない、という理由で、払ってしまう。それがいま、中小企業の現場で起きていること。 — 編集部・取材ノートより

TAKE 02 / 提案 顧問弁護士のように、AIにも顧問がいる。

顧問弁護士に月々払っているのは、訴訟のためではない。「これ、契約書サインする前に、ちょっと見てもらえますか」の一言のためだ。顧問税理士に払っているのも、確定申告のためだけではない。「この経費、通りますか」に即答してくれる相手がいる安心のためだ。

AI顧問は、その並びに立つ。「このベンダーの見積、妥当ですか」「今うちの規模でChatGPT有料版、意味ありますか」「経理の松本さんの残業、AIで減らせますか」——電話一本で、あるいはチャット一往復で、あなたの会社の実情を知った上で答える相手。それが、いま最も足りていないポジションだと編集部は考える。

御社の今の状況なら、そのSaaSは要らない。先に、経理の松本さんの手元にChatGPTを入れましょう。 — 事前ヒアリングで実際に返された助言のひとつ

これは架空の台詞ではない。ドライテスト前の事前ヒアリングで、実際に本サービスの担当者が現場のオーナーに返した助言だ。ベンダーが売りたいものと、その会社が本当に必要なものは、多くの場合ずれている。そのずれを、あなたの側から一緒に見てくれる相手——顧問という関係とは、突き詰めればそれだけのことでもある。

TAKE 03 / 相談例 実際に、何を相談できるのか。

具体的に想定している相談は、大きく三つの温度感がある。編集部が企画担当に聞き取った、実際に返せる範囲を紹介する。

▼ 想定される相談の型
電話一本
「今日、営業先で AIの話 が出た。どう答えれば恥をかかないか
その場で分かるように、そちらの業界文脈に翻訳して即答する。 当日対応
見積レビュー
「このベンダーの提案書、300万円分の価値ありますかあるなら押し、無いなら断り方まで
提案書と御社の状況を突き合わせて、判断の根拠まで書面で返す。 数営業日
業務同席
「受注→請求→入金までの流れ、AIで一番手を抜けるのはどこか
月次で業務棚卸しに同席し、次の一手を一緒に決める。継続前提だから返せる質の相談。 月次同席

共通しているのは「御社の実情を踏まえて」返すこと。一般論のAI活用術は、書店にもYouTubeにも溢れている。それを聞くために、顧問料を払う人はいない。あなたの会社の、あなたの業務の、あなたの取引先のことを覚えていて、その文脈で返す——そこにだけ、月額を頂く根拠がある。

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TAKE 04 / 市場のいま 「月100万」と「無料」の間にある、空席。

本特集を組むにあたり、AI相談窓口の市場を編集部で棚卸しした。分かったのは、中小企業(従業員数名〜数十名)にとって、ちょうどよい席が、実はまだ空いているということだった。

相談先
実態
大手コンサル(IBM/NRI等)
月100万〜。中小企業のところには、そもそも来ない。
中堅AIコンサル(数十万〜)
受注案件ベース、単発が中心。継続前提の相談相手にはなりにくい。
よろず支援拠点/商工会議所
無料。ただし業種特化の判断や、個別の見積レビューまでは踏み込まない。
ChatGPT/YouTube 独学
情報は取れる。ただし「うちの場合」を判断してくれる誰かではない。
AI顧問
月5〜10万想定。電話一本の距離にいて、御社のことを覚えている。この席がぽっかり空いていた。

TAKE 05 / ヒアリング 相談された、実際の声から。

「見積300万円のAIツール、断っていいのか誰にも聞けなかった。『御社の月商だと、まだ要らない』とはっきり言ってもらえて、その日の夜、久しぶりにぐっすり眠れました。

— 卸売業/東京都・従業員22名/事前ヒアリングより

「ChatGPT有料版を全社で入れるかどうかで、社内で三ヶ月揉めていた。『まず経理の松本さんだけ入れて、他は無料でいい』——この一言で決まった。あんなに揉めた話が、二十分で。」

— 製造業/神奈川県・従業員34名/事前ヒアリングより

「AIコンサルを名乗る個人事業主に3社会って、それぞれ言うことが違った。単発じゃなくて『御社を継続的に見る前提で答える』人が欲しかったんだと、後で気づいた。」

— サービス業/千葉県・従業員9名/事前ヒアリングより

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EDITOR'S NOTE / 編集後記

本特集の取材で最も多く聞いたのは、「相談する相手がいれば、あの契約は結ばなかった」という後悔の声だった。AIというテーマは新しくとも、抱えている感情は、経営者が昔から知っている「独りで判断する怖さ」そのものだったのだと思う。顧問という関係が、次はまた別の会社にも、静かに届きますように。

— 編集部